医学

がんになりにくいハダカデバネズミ、発がんさせようとしても発症しない――広島大学ら研究チーム


A Face Only a Naked Mole Rat Queen Could Love… flickr photo by John Brighenti shared under a Creative Commons (BY) license

ハダカデバネズミはアフリカのサバンナの地下に生息するマウスと同程度の大きさのげっ歯類です。最大寿命は37年以上の「最も長寿なげっ歯類」で、がんをはじめ老化に伴うさまざまな病気になりにくいことが知られており、このハダカデバネズミががんに罹ることはほとんどありません。

熊本大学、東京大学、広島大学、岩手医科大学、日本医療研究開発機構などの合同研究チームは、ハダカデバネズミがどれだけがんに強いのかを調べるために、3-メチルコラントレン、またはDMBA/TPAの2種類の発がん剤を使って人為的にがんを発生させる実験を行いました。

その結果、なんと2年以上に渡って投与してもがんになったハダカデバネズミは1匹もいなかったといいます。また、皮膚がんの原因となる紫外線を照射させる実験を行っても結果は変わりませんでした。

研究者らが詳しく調べた結果、どうやら発がん剤を投与されると一般的なマウスと同じようにDNAが傷ついたり細胞死が起きたりはするものの、そのときに起きる発がんを促進する炎症応答がハダカデバネズミでは低く抑えられていたといいます。

ハダカデバネズミのがんになりにくい性質の解明が進めば、もしかしたら私たちヒトも同様にがんを”克服”できるかもしれません。

【研究成果】がん耐性齧歯類ハダカデバネズミの化学発がん物質への強い発がん耐性を証明~炎症抑制を介したがん耐性機構の一端を解明~ – 広島大学

猫アレルギーの人でも大丈夫な猫をつくり出す研究が進行中

バイオテクノロジー企業InBioをはじめとするアメリカの合同研究チームはこのほど、猫アレルギーの原因となるタンパク質の産生を阻害して低アレルギー性の猫を作る研究について発表しました。

猫アレルギーのおもな原因は猫の「Fel d 1」というたんぱく質です。これが猫の唾液や毛に含まれており、猫アレルギーの人が吸い込むとくしゃみや鼻水、喘息や目の充血やかゆみなどの症状を引き起こします。

しかしなぜ猫が「Fel d 1」を生成するのかについてはまだよく分かっておらず、猫の品種によってもその生産量にはばらつきがあることから、猫にとって必須ではなく、無くても健康上問題ないと考えられています。

これに注目したバイオテクノロジー企業InBioをはじめとするアメリカの合同研究チームは、遺伝子改変技術を用いてこの「Fel d 1」の産生に関わる遺伝子を削除する研究に取り組んでおり、このほど研究成果が発表されました。

将来的にはアレルゲンとなる「Fel d 1」をほとんど、あるいは全く産生しない猫をつくることを目指していますが――猫の健康上なにも問題がないとしても、人間の都合の良いように猫を作り変えるのはいかがなものでしょうか…

Reference:Evolutionary Biology and Gene Editing of Cat Allergen, Fel d 1

トルコの牧場で1つ目のヤギが産まれる――トルコ・キリス県

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トルコ南部のキリス県ゲクムサ村の牧場で先月、一つ目のヤギが産まれたとDAILY STAR誌が報じました。

牧場を営むアフメット・カルタル(Ahmet Kartal)さんは、25年間ものあいだ畜産業に携わっていましたがこのような出来事は初めてなのだそう。

このヤギは眼球が入る穴(眼窩)が一つしかなく、その中に2つの眼球がある頭蓋骨の形成異常奇形で、耳の異常発達および鼻の発育不全がみられるといいます。

通常、このようなヤギが産まれた場合は数日で死んでしまうか、しばしば感情的に処分してしまうことがありますが、農場主のカルタルさんは「命を救ってほしい」と地元当局に訴えており、DAILY STAR誌には仔ヤギを抱っこする写真が掲載されています。

恐らく長生きすることは難しく、成長できたとしても異常形成による苦痛が伴う恐れがありますが、それでも他のヤギと変わらない愛情を注ぎ大事に扱うカルタルさんの想いが感じられます。

人の血液中から初めてプラスチック粒子が検出される――オランダ・アムステルダム自由大学

このほど、オランダ・アムステルダム自由大学の研究により人の血中からはじめてプラスチック粒子が発見されました。

研究者らが匿名の健康な被験者22名の血液サンプルを分析した結果、うち17名の血液サンプルからプラスチック粒子が確認されたといいます。

確認されたプラスチック粒子のうち最も多かったのがPET(ポリエチレンテレフタラート)で約半数を占め、ポリスチレンが36%、ポリエチレンが23%でした。

今回の研究では0.0007mmという非常に小さなプラスチック粒子を検出することができ、22名の血液サンプルにおけるプラスチック粒子の濃度は平均1.6㎍/mLという非常に低い含有レベルではあったものの、研究者らは健康への長期的な影響を強く懸念しています。

Reference:Microplastics found in human blood for first time – The Guardian

朝食を抜くと体重が増える、マウスの朝食を抜きにして明らかに――名古屋大学


※写真は本研究と無関係です。

朝食を抜くと太るという報告がある一方、朝食を抜くだけのダイエット法なども一部で流布されていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

名古屋大学の研究者らは、活動期における最初の4時間を食べさせないようにしてマウスの”朝食”を抜きにしました。その結果、マウスの脂肪が増えて体重が増加し、さらに筋肉量が低下していました。

近年の研究では代謝に関わる内臓や筋肉の”時計”は食事のタイミングで調整されていることが明らかになっていますが、今回の実験結果について研究者が詳しく調べたところ、どうやら朝食を抜いたことによって体温や肝臓、脂肪組織の”時計”に異常が生じたために脂肪が増えたと考えられるといいます。

この実験結果はマウスだけでなくヒトにも当てはまると考えられ、研究者らは朝食をしっかり摂ることはメタボリックシンドロームやサルコペニアシンドロームの予防にも役立つと指摘しています。ダイエットに興味がなかったとしても、健康のためにしっかり朝食は摂った方が良さそうです。

Reference:朝食を食べないと、体重が増えるだけではなく、筋肉量も低下することを解明 – NU Research Information 名古屋大学 研究成果発信サイト