水生動物

アメリカ・パドレ島でアオミノウミウシが相次いで目撃される、触らないよう警告

Glaucus atlanticus
Poyt448, Peter Woodard / CC BY-SA

アメリカ・テキサス州のパドレ島の国立海岸で、ある生物の目撃情報が相次いでいる。「ブルーエンジェル」、または「ブルードラゴン」という名前で呼ばれることもあるアオミノウミウシだ。

このパドレ島の国立海岸は、本来ならアオミノウミウシが見つかることはない。パドレ島国立海岸のfacebookアカウントにアオミノウミウシの写真を提供したトレイ・レーン一家の話によると、30年間に渡ってこのパドレ島で休暇を過ごしているが、アオミノウミウシを見たのは今回が初めてで、今シーズンに入って立て続けに4匹を発見しているという。

アオミノウミウシは体長約3cmほどのミノウミウシのなかまで、外洋性であるため通常は沿岸部でみられることはないが、今回のように沿岸へと漂着することがある。大西洋や太平洋、インド洋の温帯~熱帯の海に広く見られ、日本では南西諸島や小笠原諸島など鹿児島より南の海でみられる。広い外洋に分布して生息しているため、そういった意味ではあまり珍しくはない。

アオミノウミウシの「盗刺胞」

この生物の厄介なところは、毒を持っているということだ。アオミノウミウシはクラゲやイソギンチャクのように刺胞という毒針のある細胞を持っているが、実はこの刺胞は本来、アオミノウミウシが作ったものではない。実は、アオミノウミウシはクラゲの毒を”盗む”ことができるのだ。

アオミノウミウシは肉食性で、主にクラゲ類を食べる。このとき、ギンカクラゲやカツオノエボシなどが持つ刺胞を、そのまま体内に取り込んで体表に移動させ、身を守るための武器として再利用するのだ。悪名高いカツオノエボシの刺胞を取り込んだアオミノウミウシに触れると、カツオノエボシほどの刺胞はないにしても、刺された部分に激痛を感じるという。

参考記事
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このアオミノウミウシはしばしば大量発生して沿岸部に流れ込むことがあり、2017年にはクイーンズランド州沿岸で63人もの観光客がミノウミウシに刺されて病院に搬送されたという。今回アオミノウミウシが相次いで目撃されているパドレ島では、被害が出ないようにFacebook上でも注意が呼びかけられている。

体長が数cmであるため、触れたことに気付かれないこともあり、その美しさから不用意に触って刺されてしまうこともあるようだ。しばしば、このアオミノウミウシを(下からすくうように)手で持つ写真が投稿されることがあるが、もしこのアオミノウミウシに偶然遭遇したとしても、決して触らないように。

不気味な生物「ユムシ」が、カリフォルニアのビーチに大量に打ち上げられる

警告
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アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコの美しいドレイクス・ビーチ(Drekes Beach)。しかし、今ここは地獄と化している。日本では「ユムシ」と呼ばれている奇妙で不気味な生物が、この海岸に大量に打ち上がっているのだ。

ユムシとはどんな生物なのか?

ユムシ(螠虫)はミミズやヒルなどが属する環形動物の一種で、ユムシ動物ユムシ目ユムシ科ユムシ属に分類される生物の総称だ。体長はおよそ10~30cmほどで、太ったミミズのような姿をしており、乳白色の体はまるで皮膚のようで薄気味悪い。海外ではその姿からペニスフィッシュ(penis fish)と呼ばれているようだ。


IMG_2966 flickr photo by evenkolder shared under a Creative Commons (BY) license
食用として積まれたユムシ。

一方の先端には口があり、その周囲には剛毛が生えている。興味深いことに、この剛毛が何の役に立っているのかはよく分かっていないという。そして、その口の反対側には肛門が備わっている。ナマコでは口と肛門が一緒になっているが、ユムシの場合は口と肛門でしっかりと分かれている。


IMG_3031 flickr photo by evenkolder shared under a Creative Commons (BY) license

干潟の砂などに潜って生活し、吻(ふん)と呼ばれる器官を伸ばして、粘液を分泌しながらデトリタス(生物由来の死骸や排泄物などの有機物)を絡めとり、繊毛で吻の根本にある口まで運んで食べる。雄と雌に分かれている雌雄異体であり、生殖には体外受精が行われる。産まれた幼生はしばらくプランクトンとして浮遊生活を送ったのち、砂に潜って底生生活を行うようになる。

釣りのエサとして使われることもあるが、韓国や中国では食材として刺身にしたり、炒め物や煮物にして食べられており、特に韓国では「ケブル」と称され、媚薬の効果があると信じられている。
日本でも北海道の一部などでは珍味として知られており、口と肛門のある両端を切り、内臓を取り出してから刺身や煮物、野菜炒め、酢味噌和えなどにして食べるという。ユムシには特有の食感があり、味はミル貝に似ているそうだ。

カリフォルニアでは冬季特有の強い低気圧によって嵐に見舞われ、海底にいたユムシが巻き上げられて一斉に打ち上がったという。訪れた人々は気味の悪い様子を示しながらも、一部の人々はこの状況を意外にも楽しんでいるという。海岸を埋め尽くすほどのおびただしい数のユムシが今後どうなってしまうのかは見当もつかないが、しばらくは海鳥たちのビュッフェとして楽しまれることなりそうだ。

世界でまだ確認されていないダイオウグソクムシの脱皮、今回も脱皮中に死んでしまう


Giant Isopod flickr photo by NOAA Ocean Exploration & Research shared under a Creative Commons (BY-SA) license

世界初の完全脱皮が期待されていた、三重県鳥羽水族館で飼育されているダイオウグソクムシが死んでいることが12月10日に明らかになった。

ダイオウグソクムシ(Bathynomus giganteus)はダンゴムシやワラジムシ、フナムシなどの等脚目のなかで最も大きな種だ。おもにメキシコ湾や西大西洋の深海に生息しており、海底に沈んだ魚やクジラなどの死骸を食べて生活するため「深海の掃除屋」とも呼ばれている。

本種の特徴は何といってもその「大きさ」にある。日本最大の等脚目であるオオグソクムシが体長約15cmまでに成長するのに対して、ダイオウグソクムシは最大で50cm、体重は1kgにも達することがある。まさに”ダイオウ(大王)”の名に恥じない生物だ。ちなみに、名前の”グソク”は日本の甲冑(かっちゅう)の別称である具足(ぐそく)に由来している。


ダイオウグソクムシ flickr photo by TAK. shared under a Creative Commons (BY) license
オオグソクムシとダイオウグソクムシ。その差は歴然としている。

しかし、ダイオウグソクムシでは他のグソクムシの仲間とは異なり、徹底した管理が必要になる。オオグソクムシは水温18度までは大丈夫だが、ダイオウグソクムシでは水温が1桁を超えるとすぐに死んでしまうという。また、光にも非常に敏感で、オオグソクムシでは蛍光灯程度の明かりなら大丈夫だが、ダイオウグソクムシでは光に当たると失明を起こしてすぐに死んでしまうというのだ。
だが、現在では国内での飼育管理方法も確立され、多くの水族館でダイオウグソクムシの展示が行われるようになった。

三重県鳥羽水族館も、ダイオウグソクムシを展示している施設の一つだ。この鳥羽水族館で飼育されている体長約31cm、重さ約1kgの通称「No.23」という個体では、今年9月頃からある”興味深い現象”が観察されていた。ダイオウグソクムシの”脱皮”である。

ダイオウグソクムシの脱皮

ダイオウグソクムシの脱皮が観察されることは世界的に珍しく、確認された例はこれまでに国内で3例(そのうち2例は鳥羽水族館)、アメリカで1例のみであった。
ダイオウグソクムシでは、最初に体の後半部分から脱皮し、この部分がしっかりと硬化したあとで前半部分の脱皮を行うとされる。しかし、これまでに確認されている4例はすべて、体の後半部分を脱皮した時点でまもなく死んでしまっているのだ。

今年10月13日の時点で、「No.23」は後半部分の脱皮が成功していた。このまま順調に進めば、前半部分も脱皮して世界初となる”完全脱皮”になると思われていたが、12月10日に「No.23」が死んでいるのを飼育員が確認したという。少なくとも、後半部分が脱皮した時点では”元気な様子”を見せていたというが、死んでしまった詳しい原因は分かっていない。鳥羽水族館では今後、「No.23」の死骸を解剖して、詳しい原因を調べる方針であるという。

ダイオウグソクムシはもちろん脱皮をして大きくなるため、成長していく上で必ず行われるプロセスであるが、確認例が無いために詳しいことはまだ明らかになっていない。未だに謎に包まれたダイオウグソクムシの完全脱皮が、願わくば日本で観察されることを期待したい。