ニホンウナギの稚魚は捕食者に食べられてもエラの隙間から逃げ出す能力があることを長崎大学の研究者らが明らかにしました。
ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されていますが、その生態にはまだよく分かっていないことが多く、資源の維持・回復のためにも全容の解明が望まれています。特に、ニホンウナギが捕食者に対してどのような回避行動をとるのかについて直接調べた研究はありませんでした。
そこで長崎大学の研究者らは、ニホンウナギの稚魚と捕食者であるドンコを同じ水槽に入れ、稚魚がどのように捕食から逃げるのか、そしてどのように食べられてしまうのかを観察する研究を開始しました。
実験当初はハイスピードカメラを使って捕食者から逃げる瞬間、そして捕食者に食べられる瞬間を撮影して観察していましたが、あるとき実験終了後になぜかドンコに食べられたはずのウナギが水槽内を泳いでいるのを研究員が発見。
ハイスピードカメラから長時間撮影できる通常のカメラに切り替えて観察を行うと、ウナギの稚魚がドンコのエラの隙間から抜け出しているのを確認したといいます。
半数がエラから逃げ出すことに成功
研究者らが他の個体でもエラから逃げ出すことができるかどうかを検証した結果、54匹中28匹、なんと半数以上がエラの隙間から抜け出すことに成功しました。
捕食者に食べられてしまった後に生き残ることができる生物はこれまでにも多く確認されています。例えば2018年にはナナフシが鳥に食べられても卵が無傷で排出されることが確認されました。
また、2020年にはマメガムシという昆虫がカエルに食べられても生きたまま消化管を通過してお尻から脱出することが明らかになりました。
参考記事
カエルに食べられてもお尻から脱出する昆虫が発見される – エピネシス
https://epinesis.net/archives/post-4371.html
こうした生き残り戦略は多くの場合、頑丈な殻などによって消化されずに排泄されるといった高い防御力を活かした”受け身の戦略”である一方で、今回のニホンウナギの回避行動は防御力によらず巧みな技でエラからすり抜けるという点で、生物としても非常に珍しい行動であるといえます。
また、興味深いことにエラの隙間から抜け出した個体はすべて尻尾から抜け出したといいます。これは、ウナギが後ろ向きに泳ぐことが得意なことと関係しているかもしれないと研究者らは考えています。
今後は、ニホンウナギだけでなく同じウナギ科のアナゴや、ハゼ科、ナマズ科などにみられる細長い形をした他の魚でも同様の能力を持っているのかについて明らかにしていく方針です。